
気づくとバスは停車していた。他の乗客はぞろぞろと外に出始めている。
少年も一緒になって外に出る。干涸びた大地と灼熱の太陽の日射しが周りを囲んでいる。乾いた強風が頬を伝い、頭の中を少しだけクリアにする。ここはアメリカという国の、西部の乾いた大地の上だ。とりあえず混乱は過ぎた。
サビ男が近づいてきて「休憩だ。どうだ、大丈夫か」と声をかけてきた。
「うん。元気だよ」と少年は嘯いた。本当はこれっぽちも元気なんかじゃない。
荒野の真ん中に、掘建て小屋がありベンチがある。どうやらそこは休憩所らしい。しかし乗客は誰一人その中には入らずに、風と太陽を浴びて、道ばたで背伸びをしている。数人は煙草を美味そうに吸っている。目と鼻の先には線路が一本走っている。こんなところに列車が走っているのだろうか?
サビ男は、ちょっと行ってくると言って、線路の方に進んでいった。
強風のせいでサビ男の体からは鉄粉が舞っている。ボロボロの服はたなびいて、千切れて飛んでいってしまいそうだ。やはり足を引きずっている。怪我のことを聞くのを忘れていた。
入れ替わりにインディアンの男が近づいてきた。少年の横にある大きな石に腰をかけ、無言で煙草を吸い出した。バニラアイスのような甘い匂いが少年の鼻孔をくすぐる。
「悪かったな」とインディアンは言った。「でもどうして俺の居場所がわかったんだ。犬の鼻でも持ってるのか?」と理解不能な言語で話しかけてきたが、もちろん少年には難しかった。それよりもお金を返してほしかったが、何と言ったらいいのか思いつかない。
インディアンは会話を諦めて、服のどこかから紙切れを出し、そこに鳥の絵を殴り書きした。少年はインディアンの顔を見る。インディアンは自分の顔を指さす。どういう意味だろう? 鳥という名前なのだろうか?
そもそもどうしてこのトリ、少年はこのインディアンをトリと呼ぶことにする、は泥棒のくせに平気でここにいるのか不思議だった。悪びれる様子は一切ないし、だからといって何かを企んでるようにも見えなかった。しかし少年は用心のためにカバンをぎゅっと抱きしめた。それを見たトリの丸眼鏡の奥が少し微笑んだように見えた。
