sunday所属の女優。特技は夢を自由に見れること。
それと妖精を飼ってるという噂も。
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貝塚から帰った僕は、3人の女性に意見を求めた。
まずは女優の年清由香に電話した。
「まっくら殺人事件」というわけのわからないタイトルの演劇公演の準備で忙殺されてるそうだ。それでも彼女は熱心に僕の話を聞いてくれた。彼女がこういう類に食いつくことは知っていた。スティーブン・キングの全作品を読破している女を僕は彼女以外知らない。
「サビ猫?」まず彼女が食い付いたのはそこだ。そこかい!
「サビ猫は、まあいいんだよ、本編とは関係ないから。で、どう思う?」
「んー、それは、ほっとくか、ほっとかないかってこと?」
「それもあるけど」
「ねえ、ひとつだけ確認していい? これまたいつものように木下君の作り話じゃないよね」
「違うよ。いつものは、クジラに呑み込まれたけどなんとか助かった、とか、宇宙人に会って」
「え、宇宙人に会ったの?」
「会ってないよ」彼女との会話は面白いけど疲れるのだ。「宇宙人には会ってない。宇宙人の宇宙食は食べたことあるけど」
「なにそれ!」やっぱり食い付いた。
「その話は今度にしよ。それよりも、僕が気になるのは、弟は本当に失踪したと思う?」
「どういうこと? 虚言症ってこと。木下君じゃないんだから」
僕は虚言症だと思われてるのか。解離性障害で虚言症、そろそろ本気で入院を考えた方がいいかもしれない。「なんか、あまりにも他人事のような喋り方だったんだよ。僕を混乱させたいだけのために話してるというか」と僕は根拠を説明した。
「木下君を混乱させて、その人にどんなメリットがあるの。私は本当だと思うよ。人ってさ、突然の不幸な出来事に対処できずに、異常なまでにクールになることってあるし。その冷静さが私には逆にリアルだけど。彼女はまだ4年前のその日から進んでいないんじゃない。ピン留めされてる感じがする。その博物館に」
「まるで展示品のように」
「そう、箱の中のミイラのように」
そして年清が導いた結論はこうだ。「結局、木下君はその人のことが気になってる。きっとかわいい子だった。じゃあなんとかしてあげなよ。からからに干涸びちゃう前に」
なるほど、決めるのは僕だ、ということか。最後に訊いてみた。「まっくら殺人事件ってどんな話なの?」
「カッパの探偵が出てきて、まっくらの中で殺人事件を解決するの」
「・・・ありがとう。がんばってね」
「もしどうしても困ったときはカッパ探偵を呼んでね」
「わかった。そうする」と、僕は受話器を置いた。


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