いわゆるメスカリン系ドラッグ。ダメ。ゼッタイ。
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僕は謝辞と今度飯をおごる旨を返信した。コーコさんが食べられるものは限られているのでなかなか店を探すのが難しい。さらには僕がオーガニック料理が嫌いなので、なんだかヤギになった気分なる(玄米や野草のどこが美味いのだ?)、おそらくアルコールで手を打つことになるだろう。

もちろん僕は気づいていた。高橋めぐみは、あのエドモント・テーラーの51歳のときの子供だ。つまり吉沢さん(本名は大久保美樹子だった)は、エドモント・テーラーの孫だったわけだ。なぜそのことを僕に言わなかったのだろう? なにか隠さなくちゃいけない理由があるとすればそれは何だろう?
さらに混乱する。てことは、エドはやはり実在するのだ。架空の人物なんかじゃないということになる。さらに弟は、本当にいなくなったのか怪しい。ミイラになるために穴の中で鈴を鳴らしているのかもしれない。
だとすれば、吉沢さんはなぜあんな嘘を? それも長編映画なみの微に入り細にわたった失踪事件を拵えなくちゃいけなかったんだ。

推理するだけ無駄だ。深夜番組でも見て気を紛らわせようとした。グラビアアイドルが水着姿で生きたタコと格闘していた。シュールで無反省な世界が脳みそに心地いい。水着姿でタコと格闘するよりかは、現実はまだ確かだ。チャンネルを変えるとギラーミン版「キングコング」が流れていた。そういえばカルバーシティで撮影された「キングコング」はどのバージョンなんだろう。30分ほどでエンドクレジットが流れて、テレビを消し、眠る。

記憶に残るような夢は見なかった。午前7時に目を覚まし、お湯が沸く間、歯を磨きに風呂場に行った。洗面所は風呂場にあるのだ。僕はごしごしと歯を磨きながら、なにか変だぞと思った。そして目の片隅入ったものをしっかりと見つけた。空のはずの浴槽に、大量の砂があった。
最初僕はそのことに恐怖は感じなかった。いつの間に、俺は砂を風呂場に持ち込んだ?と考えた。もちろんそんなことをした覚えはなかった。それに昨晩、風呂に入ったあと、しっかりと栓を抜いて出たはずだ。

誰かが夜中に忍び込んで、僕の浴槽に砂を置いていったのだ。

戦慄のようなものがじわじわと体を襲った。僕はしばらく歯磨きを続け、それからうがいをして、そしてもう一度浴槽を見た。幻ではない。確かにそこに砂が溜まっている。
2、3cmは積もってるだろうか。まだ何も置かれていない箱庭のようだ。砂は湿っていて、茶色くなっている。海岸の波打ち際によくある、あの重たい感じの砂だ。手でならした形跡や運んできた袋などは見当たらない。これは何かのメッセージなのか。これ以上、この件に立ち入るな、という宗教団体の脅しか。馬鹿げてる。僕は何も踏み込んでないし、そもそも巻き込まれてるだけなんだ。それにもしこれがそういう類いの警告ならば、ちょっとわかりづらすぎないか。何者か知らんが、砂が何かの暗喩だとしたら、僕にはそんなもん理解できません。正直タダの嫌がらせじゃないか。風呂場を砂で汚すなんて。まさか、井田君が。昨日の稽古でひどいことを言い過ぎたからか。砂は沖縄の浜辺の砂? いやいや、ありえないでしょ。一応電話してみるか。砂が何かのメッセージである考えは捨てた。であるとしたら何なんだ?
しばらく考え込んで、これは警察に電話するのはよそうと思った。
—泥棒が入ってうちの風呂場に砂を置いて帰ったんです。
こんな話をまともに扱ってくれるとは思わなかった。実際、調べてみても、何かを盗られた形跡は一切ない。盗るもんなんてないしな。

僕はシャワーで砂を流した。忘れてしまうことにした。ビニール袋ひとつ分だけ、手元においておくことにした。排水溝がつまらなければいいけど。

それから3週間後に、砂は突然語りだす。


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