注射を打ったあとにおさえる脱脂綿のこと。あれのはがさない競争を昔よくした。
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数奇と言えば数奇だ。ありきたりと言えばありきたりだ。ただの放蕩息子の一生にも思えるし、壮大なラブストーリーにも聞こえる。
でもさあ、ここまで説明を聞いても、拭いきれない。
誰だよ、おまえ。エドモント・テーラー。で、なんの人? 
51歳で子供産ましたあたりがちょっと、反応しちゃったけど、基本的には、ただの昔の外人の医者だよね。それを記念して博物館にされても困ってしまう。まあエドモントさんに興味がある人にとってはたまらない空間ですが、そんな人がこの世界にどのくらいいるのでしょう。
折角だし、一通り閲覧しましたよ。部屋は全部で14室あって、すべて数寄屋風の和室、大きくても10畳ほどの広さで、部屋の三面に、雑多な展示品が四角い箱に入れられて展示されている。それぞれの部屋にテーマが設けられていて、たとえば、1階の最初の部屋は、「医者の部屋」。聴診器や舌をアーて出して口の中を覗く銀色のスプーンのようなものやメスや白衣や綿花や直筆カルテ。つまりただの使い古された医療器具がならんでるだけだ。

どうでもいい。

ちなみに僕はこの博物館でこの「どうでもいい」を何回心の中で叫んだだろう。しかし、この「どうでもいい」陳列はまだ始まったばかりだ。これからますますどうでもよくなっていく。
2つ目の部屋は「日本の部屋」。3つ目が「アフリカの部屋」。次は「家族の部屋」。妻・房子への恋文やツーショット写真。ひげをたくわえた和服姿のエドと白衣の日本人女性が、セピア色して微笑んでいる。説明には「エドモンドは房子を溺愛していた」。わかったよ。そりゃあそうだろ51歳で子供産ましてんだから。隣には愛娘・めぐみとのツーショット。「エドモントはめぐみを溺愛していた」。だからわかったって。
他にも「時計の部屋」、バラバラにされた時計たち。「人体の部屋」、バラバラにされた体の一部を乾燥させたものたち。気持ちわる。「食事の部屋」、乾燥した果物のヘタなんかが箱に入ってる。見せるな、そんなもの。
最後の部屋が「日記の部屋」。エドモントは北アフリカ戦線に従軍したときから、毎日欠かさず日記を付けてた。そのノートが1冊1冊、四角い箱に入っている。それをガラス越しに覗くのだが、なんだかつまんなーい。

展示品はすべて几帳面に箱におさめられ、ガラスで蓋が閉じられている。よっぽど人に触れさせたくないのか。それとも酸化し劣化することを恐れているのか。
物の本によれば、博物館の起源は、ヨーロッパのバロック期にさかのぼる。王侯貴族たちは自分たちの集めた世界中の珍しい事物を四角い箱に入れて自慢した。それをヴンダーカマー(興味深い小箱)というらしいが、その延長線上にエドモントの展示方法もあるのかもしれない。

だとしても、やはりどうでもいい。貝塚くんだりまで来て、最終的に得たものは、見ずしらずのおっさんの意味不明なコレクション。今日知り合ったばかりの人が、家に呼ぶから行ってみたら延々子供の成長記録を見せられたようなものだ。生憎、お前の子供に興味はない。


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